漠然とした…

曖昧な…





愛のカタチ??












vague 〜3〜













「じゃ、また来るわ。ごっそさん!」
「ありがとうございましたぁっ!…と。」
ふぅ。今日も「べげ」は営業終了じゃ。わしらの仕事は、表の看板が「close」になった所で
まだまだ終わりはしないんじゃけど…
いつもより楽しみに待ってた今この瞬間っ!!
なんてったって、ちゃんと、お客さん気にせず喋れるけぇね★
店長と、それから、明人の目を、気にせなダメなんはキツイけどのぉ。。

ちゃん、お疲れっ!
 結構上手くできてたじゃん、接客。お客さんにも気に入られてみたいやし^^」
あっ、くそ、考え事してる間に、明人に先越されたぁ!!
「そ、そうじゃのぉっ!わしもそう思った!!」
必死に会話に滑り込むわし。・・・ダメじゃ、必死すぎた。わかってる、自分でもちゃぁんとわかってるけぇ。。
「あ、ありがとうございますっっ。
 でも、実は、緊張して今日、何を喋ったかとか、何をしたかとか、ほとんど覚えてないんです。。」
「大丈夫だいじょーぶ、ちゃんとできとったから!」
俯くちゃんに、優しく声をかけながらさりげなーくちゃんの肩に手を置く明人。
こ、こらっ!!そんなことしたらダメじゃろぉっ!!そんなことしたら、あれじゃ、えーと・・・
なんじゃっけ??せ、せ・・・あ、そう、セクハラ!!セクハラで、訴えられるんじゃからのぉ!!
じゃからじゃからっ!!その手を早ぉどけぇっ!!わ、わしは、明人を心配してじゃのぉ・・・

「千晴・・・さん??
 どうか、しましたか??」
一人でパニックに陥ってるわしに気付いたちゃんが、心配して声をかけてくれる。
いつの間にか、明人はちゃんの肩から手を離して、わしの事を不思議そぉーな顔で見とるし。。
「・・・あ、ゴメン、わし、考え事しとったんよ。うん、考え事。。」
「どーしたんじゃ?千晴、なんか変やぞ??」
・・・むかっ!!
なんじゃぁ!全部明人のせいなんじゃけぇのぉっ!!むぅ。
恨めしそうに明人を睨むと、明人はますます不思議そぉーな顔しよる。
あぁ、もぅっ!わしは怒ったけぇの!!もぅ知らんもんっ!!

むーって、急にむくれだしたわしと、状況を飲み込めずキョトンってしてる明人の間で、
ちゃんはどうしたら良いかわからず一人オロオロしてる。
「え、えっと・・・ど、どうしたんですか??
 私、何か悪いことでも・・・っ」
あー、もう。ちゃんに変な誤解させちゃったじゃろぉ。明人のあほぉ。。かばちたれ。

ちゃんはなんにもしてないけぇ、大丈夫じゃよって、わしが言ったら
「ほんとですか??」って、まだ心配顔。
なんか、こんな状況で不謹慎じゃけど、
心配顔のちゃんも・・・ぶちかわええ♪

・・・はっ!ダメじゃダメじゃぁっ!!明人への怒りを忘れてまうとこじゃった!!
明人のばか明人のばか明人のばか明人のばかぁ。
よし、怒り復活!!   ・・・って、コレでええんかのぉ??
なんかわしのしてる事って、なんか違う気がしてきたんじゃけど。。
ま、ええじゃろ☆


「そうじゃ、ちゃん、明後日、じゃっけ、楽しみじゃのぉ♪」
突然テンションを変えたわしにちょっと戸惑いながら、ちゃんはそうですねって、ニコって笑ってくれる。
幸せって、こうゆうこと言うんじゃろぉのぉ☆
明人は相変わらずキョトンって、しとるけど。
ええんじゃっ!明人なんて知らんもんねっ!!
明後日だって、わしとちゃんの2人でぶち話しして、明人の入るスキマなんてないくらい
仲良くなるんじゃもんね!!

「その、明後日行くって言ってた、千晴さんと明人さんの行きつけのお店・・・
 どんなところなんですか??」
ん?って感じに、小首を傾げるちゃん。わしも明人も釘付け。
ちゃんが動く度に揺れる長い髪と制服スカート。
なんか、ちゃんって、ふわふわしとるのぉ。。
そうじゃ、ちゃんを一言で表すと、「ふわふわ」じゃ!!

・・・あれ、これ、なんの結論じゃ??


「そうやなぁ・・・そんな綺麗くないねん。綺麗か汚いかって言ったら、汚いに分類されるくらい。」
わしが一人で変な結論を出してると、明人が代わりにちゃんの質問に答えてた。
明人が説明しながらちょっと笑うと、ちゃんも一緒に笑う。
なに、その一体感!!わし置いてけぼり?!
「でも、店は汚くても、そこのマスターはめっちゃいい人やねん!!おもしろいし・・・」
「そ、そう!そう!!マスターの話聞くんは、ぶち笑えるけぇ!こないだも、明人と一緒に行った時に・・・」
またもや必死に会話に入るわし。明人の説明、盗っちゃった♪
「ぉぃ、千晴っ!!俺が話してるの!人の説明、盗るなよなっ!!」
「いいじゃろぉ!わしが説明しても、明人が説明しても、おんなしじゃろ!のぉ、ちゃん?」
「だからって、人の話を盗ってまで自分が説明することないだろっ!!」
「じゃって。。わしじゃって喋りたいけぇ・・・」

「・・・ふふっ」
「「??」」
わしらの言い争いを一瞬にして治めた、微かな笑い声。
・・・ちゃん??」
「なんで、笑うん??」
「ふふっ・・・ご、ゴメンなさい、笑ったりして。
 千晴さんも明人さんも、とっても仲良しだったから・・・とっても楽しそうで。
 見てたら、なんだか私まで楽しくなってきちゃって。」
ちゃんは、よっぽどわしらがおかしかったのか、
目にうっすら涙までうかべながら、笑っていた。

その姿が、あまりにかわいくて

あまりにいとおしくて

わしと明人は、言い争うのも忘れて
一緒に腹かかえながら、笑った。
今更ながら、やっぱりちゃんパワーはぶち凄い。
明人への怒りなんて、すっかり忘れちゃったけぇ。
明人も、わしを怒ってたことなんてすっかり頭にないみたいで
笑い終わった後も
「俺と千晴が、仲良しぃっ?!」
とか言って、わーわーはしゃいどったし
わしもわしで
「そんなん、ホンマにありえんけぇ!!いっつもケンカばっかしじゃし、たぶん
 地球で一番仲悪い奴って言ったら明人じゃけぇ!!」
って、ぎゃぁぎゃぁ騒いどった。
ちゃんはそんなわしらを見て、ずぅっと笑ってるし
そのせいで、怒ってた気持ちなんて、どっかいっちゃうし
そのせいで、結局わしと明人は「仲良し」って事になっちゃうし
そのせいで、わし、ちゃんを独り占めしたくてたまらなくなっちゃうし

そのせいで、わしら、なんか幸せな気分にさせられちゃうし。。


完全な、完全すぎる一目ボレじゃぁ。。わし、どーしよ。
一日で、こんな本気になって、どうしたわしっ!!
今までの、余裕たっぷりの、「オトナ」なわしは、どこへ消えたんじゃろ??
わし、もう23じゃよ??それなのに、今のわしって、なんか思春期の、青い少年っぽいじゃんか。。
ちゃんの前では、どんなカッコつけも通用せん。
もしかして、これがホンマの・・・わし??

いやじゃぁっ!!こんなわし、わしじゃないもんっっ!!!!
ホンマのわしは、もっともぉっと、「オトナ」なんじゃけぇっ!!
違う違うっ!!これはわしじゃなぃっ!!
って。。わしじゃなかったら・・・だれじゃぁ??




「おいぉぃ、お前ら、まだいたのか??もぅ仕事は終わったんだろ??早く帰りな。
 あ、ちゃん、今日はお疲れ様!ちゃんのお陰で今日は大繁盛だったよ!!
 これからもずっと宜しく頼むよ。」
裏で売り上げの計算をしてた店長が、欠伸しながらのそのそ出てきた。
・・・店長の存在、忘れとった。。
「あ、お疲れ様ですっ!!
 そんな、私なんて、まだまだ・・・千晴さんや、明人さんに比べたら、
 全然仕事もできないし。。」
さっきまでニコニコしてた顔を、次は暗ぁくして、俯くちゃん。
あぁぁぁぁ、かわええっっ!!
って、ちゃんが落ちこんどる時に、わしは何を考えとるんじゃぁっ!わしのばかぁっ!!

「仕事なんて、やってる内にだんだん覚えるよ。こいつらだって、入って来た時は
 全ッ然仕事できなくて、ホント、困ったもんだよ。コップなんて、何個割られたか・・・」
「店長っ、それは言いすぎっすよ!!俺、結構役に立ってるでしょ??」
「どうかなぁ〜??」
「ふふふっvv」
「ちょ、ちゃん、笑うなよっ!!」
「あははっ・・・ご、ゴメンなさい。。ふふ・・・」
「笑いすぎっ!!」




・・・この時は素直に皆と笑ってたけど。
じっくり考えてみて。。いや、じっくり考えなくても、最初から・・・わかってた事じゃけど。
いつか、この楽しい時が、終わってしまう日が、来るんじゃよ・・・のぉ。
わしだって、明人だって。
本気じゃもん。・・・手加減なんて、絶対しない。譲り合うなんて、とんでもない。
きっと、ちゃんに熱を上げてるのは、わしらだけじゃないじゃろうし。。
つまり、ライバルはかなり多い。少なくとも、ココに1人いるわけじゃし。
いや、店長を入れて、2人か。
でも、ちゃんは、1人。当たり前の事じゃけど、ちゃんは、1人しかいないんじゃ。
ライバルは、この「べげ」だけでも、2人。
わしを入れて、3人。
もちろんちゃんを3人で分けることなんてできないし、ちゃんが誰か1人を選んでくれるとも限らない。
もしかしたら、全然違う所の男を既に選んでしまってるのかもしれないけぇ。
もしかしたら、誰も選ばないんかもしれんし。。

わかっているのは、
誰かが笑えば、その横で、誰かが泣くことに、なるって事。
わしが笑えば、その横で、明人が泣くことに、なるって事。
明人が笑えば、その横で、わしが泣くことに、なるって事。

それがわかっていても。
わしは、ちゃんが好きで、
明人も、ちゃんが好きなんじゃ。

自分のせいで誰かが泣くって事を
ちゃんが喜ぶとは思えない。
もし自分が誰かを泣かしてしまうようなことがあれば
ちゃんは本気で悲しむだろう。
自分自身が傷つくことで誰かの悲しみを回避できるのであれば
ちゃんはたぶん。。自分が傷つく道を選んでしまうだろう。

つまりわしらは。
ちゃんを困らせてしまうとわかっていて
ちゃんを悲しませてしまうとわかっていて
それでも

ちゃんが好きなんじゃ。


少しでも長く、


この幸せが


続いてくれればいいのに。


でも、それは、


わしや明人の


この想いが


叶わないって事。


ちゃんを手に入れたい。


自分だけのものにしたい。


でも、そのためには


その想いを、叶えるためには


他の誰かを


明人を


・・・ちゃんを


悲しませなければならないんじゃ。


それを、わしは・・・


そんなことを、わしは・・・


出来るんじゃろうか。






・・・やって、しまうんじゃろうか・・・。





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